南ア北部 熊穴沢ノ頭(2610m)、三ツ頭(2590m)、鋸岳第二高点(2675m)、鋸岳第一高点 (2685m) 2011年9月12-13日
所要時間
9/12 5:36 戸台川駐車場−−7:18 角兵衛沢出合−−7:28 熊穴沢出合(休憩) 7:47−−9:33 標高2130m付近で休憩 9:58−(この間、足を怪我して処置に15分程度かかった)−10:42 中ノ川乗越−−11:12 熊穴沢ノ頭(休憩) 11:28−−11:50 三ツ頭−−12:15 水場分岐 12:24−−12:29 水場 12:56−−13:04 水場分岐 13:08−−13:10 6合目石室避難小屋
9/13 5:19 6合目石室避難小屋−−5:55 三ツ頭−−6:18 熊穴沢ノ頭−−6:33 中ノ川乗越(休憩) 6:39−−7:04 第二高点(休憩) 7:41−−8:07 鹿ノ窓−−8:15 小ギャップ−−8:29 第一高点(休憩) 9:37−−9:45 角兵衛沢ノコル−−11:01 角兵衛沢出合(休憩) 11:36−−12:58 戸台川駐車場
概要
戸台を起点に熊穴沢を登り、初日は六合目避難小屋で宿泊。2日目に第二高点、第一高点を縦走して角兵衛沢を下る。
核心部は大ギャップ〜鹿ノ窓ルンゼ〜小ギャップ。大ギャップは大きく巻いてしまうので問題なし。鹿ノ窓は長い鎖があるが使わなくても登れそうなレベル(安全確保のために中盤で使用)。ただし、浮いた小石が多く、通過時はどれだけ気をつけても数個は落としてしまう可能性が大で、ルンゼ内に先行者がいる間は安全な場所で待機すること。小ギャップは第二高点側の鎖は位置が悪いため使わない方が良く、脇の草付きに踏跡がありそこが安全。下りの場合は念のためお助けロープがあると安心。小ギャップの第一高点側は途中が垂直の鎖で少々腕力が必要。できれば登りで使いたい。下りで使う場合、女性など腕力に自信が無い人がいる場合はロープで懸垂下降が安全
本コースは目印多数でルートを見失う心配はほとんどない。
クリックで等倍表示 |
第二高点〜第一高点間の詳細地図 |
鋸岳はもう10年以上前に登ったことがある。ルートは山梨側の釜無川源流経由で、往路は尾根沿いに登ったら横岳峠に出ずに稜線北側を巻いてしまい、水場のある飯場跡を経由して県界尾根に出た覚えがある。三角点峰、角兵衛沢ノ頭を経由して第一高点に至り、帰りがけに編笠山に向かった途中で露岩から落ちて股関節を痛めたものの、どうにか編笠山と横岳の山頂を踏んで、痛む足を引きずって林道を歩き、真っ暗になってからゲートに到着したのだった。あ、往路の林道途中で鹿が倒れていたのを見たな。帰りには消えていた。
当時はまだ第一高点〜第二高点間に鎖は設置されておらず、通過にはザイルが必要な時代であったこと、第二高点は地形図にも山名事典にも名前が記載されていなかったこともあり、第一高点を登っただけで満足していた。しかし、それから数年後(もっと後かも)に鎖が設置され、本格的岩装備や技術が無くても通過できるようになり、せっかくなので行ってみたいと思うようになった。今後のために岩場の経験を積む意味もあった。
難易度がどれほどなのか不明なのでネットで検索。ザイルで安全確保して通過するパーティーもあれば淡々と乗り越えている単独行者もおり、いまいちレベルが把握できない。ただ、どうやらやたらと落石が多く、3,4件の記録を読んだ中で2件で頭(ヘルメット)に落石を受けたとのこと。これは尋常ではない。いつもならヘルメットを持参するなど考えもしないが、この状況はちと危険と判断、会社の高所作業用の黄色いヘルメットを拝借することにした。これを被って登っていると登山道のメンテ業者と勘違いされるかもしれない。使わない可能性が大であるが、15mのお助けロープもザックに突っ込むことに。
今回の山行の主目的は、改訂版山名事典で新規記載された2000m峰「熊穴沢ノ頭」に登ることで、前回歩いた時に登山道はこのピークの山頂を通過せず北側を巻いていた記憶があり、甲斐駒から中ノ川乗越を縦走したときには山頂を踏んでいないと思われた。第二高点は山名事典改定でも名前は記載されず、登らなくても構わないのだが今後の岩トレーニングのためである。せっかくなので天候がよく展望が期待できる日時に登りたいと思う。
コースであるが、山頂での展望を考えると初日は6合目石室避難小屋に向かうだけにして、翌朝に難所を越えて第一高点を目指すのがよろしかろう。これなら午前の早い時刻にてっぺんに到着できるのでガスが上がる前に展望を堪能できよう。難所でガスられてルート判断に迷う事態も避けられる。
幸い、月曜、火曜と晴れの予報で、台風通過から1週間が経過して沢の水量も減っただろう。戸台川の渡渉も結構な問題で、危険なほどの水量はないのだが靴を履いたまま渡れるか微妙なのであった。最初に通過したときは川の中の飛び石に飛んだら表面がツルツルで滑って水没、全身びしょ濡れになった。2回目はどうにか無事に飛び石で渡れたが、場所を探すのに時間がかかった。今回はどうであろうか。
戸台川駐車場 | 戸台川駐車場 |
いつものように日曜夕方出発、中央道上り方向は毎度の大渋滞で小仏トンネル先頭で30kmだった。諏訪ICで降りて杖突峠を越えて旧長谷に至り、仙流荘前、戸台大橋前を通過して戸台川の河原の駐車場に到着。平日なので車は皆無と予想していたが、車が2台+バイク1台があった。バイクならこの先も入れるのに律儀な登山者だなぁなんて考える。ゲートを迂回する轍もあるが、これより先は河原を走行するので車高の高い車しか進入できない路面状況だ。増水によりかなり荒れているかと思いきや、駐車場まで水が達した気配は無かった。意外にこの辺は大雨では無かった?
明日は小屋泊まりなのでいつもの幕営より格段に荷物が軽いし量も少ない。鎖場の通過があるので荷物は軽いほどリスクは低くなる。平日なので避難小屋の宿泊者は皆無か少数に違いない。45リットルのザックに荷物を詰め込み、少しだけ荷物をザック側面にくくりつけた。あとは途中で水を補給すればOK。酒を飲んで寝た。初日の行程は余裕があるのでのんびり寝てもOKだ。
戸台川駐車場から見た甲斐駒 | 携帯を取りに戻った男性のザック |
6時間睡眠で起床、空は晴れて絶好の登山日和だ。お隣の車は無人かと思っていたら朝から活動を開始、同じ計画かどうかは分からないが鋸岳を目指すのは同じはずだ。60過ぎと思われる単独男性が僅かに先に出発したが、最初の堰堤との中間付近で携帯を忘れたと駐車場に戻っていった。装備の大きさからして日帰りか避難小屋泊まりのどちらかだろう。もしかしたら6合目避難小屋でご一緒になるかもしれない。
最初の堰堤手前の林道。よく残っている | 最初の堰堤を越えた上流側の林道。崩壊している |
最初の堰堤までの道は昨年同様で、駐車場を出てすぐは崩壊して河原歩きだが、左に曲がってから堰堤まではしっかりと林道が残っている。ところが堰堤を越えて河原に下る箇所で林道が崩壊、1m以上の段差ができており車やバイクでは下れない状況だった。よって今はオフロード車でも節約できるのは片道15分程度でしかない。
最初の堰堤の上流側。林道は完全に消失 | 適当な飛び石が無く、走って突っ切る |
かろうじて林道跡らしき雰囲気が | 発電用取水堰が見えてきた |
堰堤から河原に下りると流れは伏流となり、広い河原を適当に歩く。以前はここも右岸側に林道があったのだが、昨年歩いたときにはきれいさっぱり消え去っていた。次の堰堤に達するまでに流れを渡渉して左岸→右岸に移る必要があったが、今年はどうであろうか。結論としては、今年は堰堤を越えてから渡渉無しでずっと右岸側が行けるようであった。1箇所だけ岩っぽい右岸に流れが接している箇所があるが、たぶん簡単に高巻きできそうだった。昨年は高巻きできない場所があって最初は左岸を行く必要があったが、完全に流れが変わっていた。右岸に渡り返す場所はちゃんと選べば飛び石で渡れたが、気づいたときには既に遅く、適当な場所が無かったので足元をロングスパッツで固めて幅は広いが水深が浅く流れが緩いところを走って突っ切った。登山靴は基本的に防水なので濡れてもOKだが、靴下の高さまで水が来れば靴下が濡れて靴の中も浸水するため、靴下を濡らさないことが肝心だ。ロングスパッツで足元を覆えば短時間なら靴下の高さまで水が上がって来ないのでボチャっと足首まで水に漬けても問題ない。往路はこれを2回利用して靴を脱がずに渡渉できた。
発電用取水堰。林道で右岸側を越える | 次の堰堤までが最後の林道区間 |
右岸側は昔の林道の形跡はきれいさっぱり消失してかなり荒れているが、人間が歩く分には問題ない。支流が合流するので流れを渡る箇所もあるが、水量は少ないので問題なく歩けた。やがて次の堰堤(三峰川水力発電用取水堰)が見えてくると林道が復活して歩きやすくなる。ここは堰堤を乗り越えるために高巻きとなり水から離れるため林道は崩壊を逃れている。堰堤を右岸側から越えてすぐ上流にもう一つ堰堤があり、昔の林道はここまでだ。林道終点広場の奥で林道の路肩が崩壊し、登山道に変わる。その奥で沢が崩れて登山道も崩壊した箇所があるが危険箇所ではなく、一度沢に下って登り返して以前の登山道に復活する。堰堤付近は草ぼうぼうだが階段は明瞭、堰堤を越えて階段を下り、ダム上流の広大な河原に降り立つ。あとはほぼ左岸を行くのは昨年のパターンだ。
堰堤を右岸側から越える | 今年は流れができていた。どうにか靴を脱がずに渡渉 |
昨年以前はこの堰堤を越えてしばらくは伏流となり河原に流れは見られなかったが、昨年秋か今年に入って大雨があったようで今は太い流れが横切っていた。どこかで伏流化していれば左岸に簡単に渡れるのだが、ぱっと見た感じでは上流まで続いていそうだった。少しの間、右岸を遡上し、流れが二分して水量が減った箇所で飛び石を利用して対岸に渡ることができた。これであとは左岸を歩き、往路は熊穴沢出合で、復路は角兵衛沢出合で対岸に渡ればいい。
左岸側に断続的に踏跡あり | 埋もれた堰堤も左岸側から通過 |
河原より左岸樹林の方が歩きやすい | 樹林と河原を交互に歩く |
左岸側の河原をしばらく適当に歩くと樹林帯が登場し、ピンクリボンがぶら下がっている箇所で河原を離れて樹林の中の踏跡を辿る。こちらは河原のように石ゴロゴロではなく平坦な地面で歩きやすい。また河原に出てゴツゴツの石の上を歩いたり、再び樹林に戻ったりする。ほとんど河原の石に埋もれた最後の堰堤は左岸側の樹林帯で通過する。
角兵衛沢を見上げる | この標識は増水で流されなかった |
対岸の角兵衛沢入口のケルン。幕営適地 | 熊穴沢出合までさらに左岸を遡上 |
そのまま左岸を歩き続けると対岸の広い河原にケルンが見え、そこが角兵衛沢出合だ。左岸側には昨年同様の標識が立っており、少なくともここまで水が上がってきたことはないようだ。帰りはここに降りてくるはずで、往路はこの先の熊穴沢出合まで進む。熊穴沢出合は標識が無く、熊穴沢自体が戸台川に合流するポイントでは幅が非常に狭くてどこかの支流としか思えない程度なので、事前に調査していないと通過してしまいそうな場所だ。私はここを何度も利用しているので間違えることはない。出合付近で飛び石が利用できそうな場所がないか探したが今年は水量が多いのか、石の位置関係が悪いのか、それとも両方が原因なのかはわからないが、簡単に飛び石伝いに対岸に渡れそうな場所はなかった。しょうがないので再びロングスパッツで足元を固め、右足の1歩のみ瞬間的に水没させて渡渉した。無論、今回も靴の中を濡らさずに済んだ。
熊穴沢。出口小さく標識無しで分かりにくい(目印はある) | 空は秋の様相 |
2時間歩いたので川岸で休憩。日差しが強いが風が心地よい。たぶん日中になり気温が上がると日向では暑かろう。水を補給するか考えたが、未だザックの中の約700ccは手をつけておらず、この涼しさなら避難小屋の水場までならOKだろうとそのまま行くことにした。上空を見上げるともう秋の空の気配だ。
熊穴沢は最初だけ沢を登る | 沢に挟まれた小尾根を登っていく |
ピンクリボン多数あり | まだこのガレは序の口 |
まだまだ樹林の歩きやすい地面が続く | そろそろガレが近づいてきた |
ここから稜線までは熊穴沢を延々と登る。最初だけ石が積み重なってガラガラの沢を歩くが、沢と沢の間の小尾根に取り付いて以降はずっと沢から離れた場所を歩く。まあ、沢といってもいつもは水の流れは無く、今年は今までで初めて水が流れているのを見た。目印は昨年も見たピンクリボンが多数ぶら下がっているので迷う心配は皆無だ。シラビソ樹林が広がり日陰になるので涼しくて快適だった。時々落石に覆われた斜面になるが長続きせず、ほぼずっと樹林帯を登っていく。
嫦娥岳側斜面は断崖と急斜面の連続 | 落石が増えてきた |
やっと暗い谷間から出る | 樹林終点で休憩 |
かなり高度を上げると徐々に先が明るくなってきて、樹林の中でも足元は落石の砂利に覆われてくる。踏跡や目印がしっかりしているのでここに来てもルートは明瞭だ。標高2100mで森林限界を超えたかのように樹林が切れて一面の落石の原っぱに変貌し、ここで2度目の休憩。日が高くなって日向は暑いので日影に逃げて休む。これ以上は立木が無いので稜線に出るまで暑い日差しの中を歩かなければならない。まあ、高度は2000mを越えているので体を動かさなければ汗をかくほどではない。
不安定な岩が多くコケて擦りむいた | 下界を振り返る |
中ノ川乗越から見た仙丈ヶ岳 |
休憩を終えて出発。ゴロゴロと積み重なった落石原野の踏跡らしき筋や目印を頼りに上を目指す。もうここまで来れば中ノ川乗越の鞍部は視界の中にあり、そこまで延々と落石の上を歩くことになるので目印を頼る必要は無い。踏跡は確かに存在するが、細かい石が積もった上にあると富士山の須走のように3歩進んで1歩ズリ落ちる状態で、そんなところを歩くよりももっと安定した場所の方が歩きやすい。一般的な傾向としては大きな石が重なった箇所の方が足場が安定していることが多かった。しかし油断は禁物でそんな場所を歩いていたら足元の石が崩れてこけてしまい、角が尖った石で左足のすねを広範囲に擦りむいてしまった。これが結構痛く、じんわりと血がにじみ出てくるしで座り込んで仮処置。まともな処置は避難小屋の水場に到着してからにして、まずは傷口にティッシュを当ててその上からテーピングを貼り付けた。これで草木が直接傷に触れなくなり、登山道にはみ出た草や枝があっても大丈夫だろう。
中ノ川乗越 | 中ノ川乗越 |
中ノ川乗越から見た第二高点方面 | 中ノ川乗越から見た熊穴沢ノ頭方面 |
思わぬタイムロスがあったが再度出発。もう間もなく中ノ川乗越で、今度は足の運びも慎重だ。足ににじんだ汗が傷にしみる。久しぶりの鞍部に到着、明日はここを西に登るわけか。これより西側は歩いたことがないが、北に切り立つ崖の基部に沿って踏跡が上がっているのが見える。ネットの記録によれば第二高点までは安全ルートが続くらしい。
中ノ川乗越のテント場 | 中ノ川乗越より少し東に登ったテント場 |
さあ、これから第1目的地の熊沢穴ノ頭を目指す。稜線上の登山道は第一級とまでは言えないが良好で、夏草がはみ出している程度で歩きやすい。岩で危険な場所も無く、ヤバそうなガレの縁を歩くような箇所は北側を巻いている。鞍部から僅かに登った箇所に1張分のテント場があった。おっと、鞍部のすぐ北側にもテント場があったな。でも、ここの方が地面の程度は良好といえよう。ただしどちらも水は無い。
シラビソ樹林帯を登る | 熊穴沢ノ頭へと登る |
甲斐駒 | ここで登山道を離れ稜線目指す |
稜線直下 | 稜線直下のハイマツを木登り |
登山道はシラビソ樹林帯をぐんぐん登っていき、稜線を離れて北側を巻くようになる。登っていって水平移動に変わったところでそろそろGPSの出番かと電源を入れると熊穴沢ノ頭は西に100mと出た。おっと行き過ぎか。でもここの方が標高を稼いでいるのでここから山頂を目指そう。ザックをデポし、怪我をした足にロングスパッツを装着して藪から傷口を保護して出発。傾斜はきついが初めはシラビソ樹林で藪はなく簡単に登れる。しかし稜線直下に出ると稜線上は石楠花とハイマツが登場、特にハイマツは下向きに枝が伸びているので厄介だ。隙間を狙って幹にぶら下がり、腕力で強引によじ登る必要があった。
稜線上はハイマツの籔 | 熊穴沢ノ頭山頂。登山道が真上を通っていた |
尾根上に出ると平坦な肩の西端に出たようで、これより西は標高が落ちていた。GPSの表示を改めて見直すと山頂位置がずれて東に100mとなっていた。尾根上は深いハイマツでこれを行くのは無理とは言わないが相当スピードダウン必至、しかも直接ではないが足の傷にハイマツが当たるだろうし痛そうだ。これだったら登山道で東に100m移動し、直下に至ってから真上に移動した方が楽そうだ。いったん登山道に戻り、GPSを見ながら登山道を歩く。地形図やエアリアマップではこの付近の登山道は稜線北側を巻いてしまうよう表記されており、このまま水平移動だとばかり思っていたが、少し進むと上に登り始めた。そして稜線に乗ったまさにその場所が熊穴沢ノ頭であった。なんと登山道は正確な山頂を通っていたのだった。というわけで、わざわざ今回ここに来なくても、私は過去2回山頂を登っていたのであった。山頂には特に標識は無く今までの登山道同様にピンクリボンがぶら下がるだけ。せっかくなので赤テープを残しておいた。
熊穴沢ノ頭東側のテント場 | テント場から見た嫦娥岳へ続く第三尾根 |
ほとんど標高が変わらない稜線上を東に進むと右側にテント一張分の草付が登場、DJFが幕営した場所に違いない。そこから第三尾根を見下ろせるが、ある箇所から急激に下るので見える範囲は限定的だ。それに樹林に覆われてその下にある崖は見ることはできない。ここを歩くことは無いだろうなぁ。
甲斐駒にガスがかかり始めた | 樹林の隙間から見た三ツ頭 |
朝露で濡れそうな草付き | 標識には表記は無いが烏帽子岳分岐 |
樹林帯を下っていき、三ツ頭への登りは尾根上を行かずに北側を巻く。そして烏帽子岳との稜線に乗ってから山頂に方向を変えた。ここには鋸岳や甲斐駒の案内標識が立っているが烏帽子岳の標識は無い。しかし実際には山頂まで踏跡があり簡単に登れるため、時間と体力に余裕があるならばせひ立ち寄りたい。今回は足の怪我もあり、踏跡にはみ出した灌木やハイマツに足をこすりつけられると痛いのでパスだ。ま、過去に2回登っているしな。
三ツ頭へ登る | 三ツ頭山頂 |
三ツ頭から見た六合目石室避難小屋。屋根が見える | 三ツ頭から見た烏帽子岳 |
三ツ頭から見た甲斐駒〜仙丈ケ岳 | |
三ツ頭から見た北岳〜塩見岳 | |
三ツ頭から見た甲斐駒〜坊主山 | |
三ツ頭から見た熊穴沢ノ頭と第三尾根 |
一登りで南側が開けた三ツ頭山頂に到着。雲が上がってきているがまだ白峰三山は見えていた。ギリギリ顔を出している坊主山が懐かしい。あれから誰か登った人がいるだろうか。いるとしたらkumo氏だけであろうか。避難小屋の屋根も見えており、本日のゴールは近い。
六号コース分岐。今は廃道 | 案内標識 |
白砂の開けた場所が水場分岐 | 水場は砂地を斜め下に下る |
この後は基本は下りだが素直にはいかず、小ピークをいくつか越えていく。最後のピークは旧丹渓山荘へと下る登山道分岐だが、既に廃道になっているのは前回の縦走時に知っている。北沢峠へのバスが運行されている今日では、もう登山道を再整備することは無いだろう。そのすぐ先が水場及び避難小屋分岐で、樹林を抜けて白い砂地の広場になっているのですぐに分かる。ここで荷物をデポし、アタックザックに水筒と濡れタオルを入れて水場に下ることにする。
水場入口。目印多数あり | 急斜面を下る |
前回来た時には水場へ下る道の入口には何の目印もなく、私がハイマツに赤テープを巻いておいたのだが、今は目立つ場所にリボンが複数ぶら下がっている。でも案内標識が無いのはちと不親切か。まあ、事前にネットで情報収集しておけば分かるだろうけど。しっかりした道で迷う心配もなく、最初は石楠花混じり、傾斜が急になるとシラビソ純林をガンガン下らされる。もったいないが水を得るためには仕方ない。
シラビソ樹林 | 水場が近い |
岩から湧きだしている水場 | ホースを設置しておいた |
稜線から標高差で70m下ったところで小さな沢の源頭に到着、岩の間から水が流れ出している。昨年の状況から考えて雪に埋もれさえしていなければ晩秋でも水が出ていると思われる。源頭なので水量が多くはなく水深が浅く岩に張り付いて水が流れているため、直径の大きな容器に水を汲むのはちょっと面倒だ。こういうときに樋で水を岩から引っぺがしてやれば簡単に汲めるのだが。樋は無かったがホースの切れ端を発見、流れの中に差し込んで岩で抑えてやると勢いよく水が出てきた。これで簡単に容器に水を入れられるようになり、2リットルを10秒もかからずに満杯にできた。タオルを水につけて全身の汗をぬぐってさっぱりできた。水を確保してから傷口の処置。ペットボトルの水を足にかけて傷口を洗い流し、ティッシュを当ててテーピングで上から固定。消毒薬は無いのでここまでで我慢。傷周囲の汗を洗い流せたのできれいさっぱりしたし、汗の塩分で傷が痛むこともなくなった。
古い石碑あり | 避難小屋へは右にトラバース |
六合目石室避難小屋 | 内部はきれい。板の間はmaxで10人弱か |
汗をかかないよう急斜面をゆっくり登って稜線に戻ってザックを背負い、本日の最終地点となる石室避難小屋へ。稜線を離れて横移動なので苦労は無い。大岩の重なった斜面を横断すると避難小屋到着。まだ先客はおらず無人であり、窓が少なく内部が暗いのでドアを開け放って照度を確保。今日は気温が高めで部屋の中より外の方が暖かいので開けっ放しで問題なしだった。しばらく誰も来なかったが、まずは甲斐駒方面から単独男性が。しかし幕営らしく話をして小屋を覗いただけで下って行った。この人は水場分岐の白砂地で幕営していた。次は私と同様に鋸岳方面から老人が。今朝出発時に携帯を忘れて取りに戻った人で、今日のうちに鋸岳を越えてここまでやってきたとのこと。ご苦労様。落石が多いので要注意とのことだった。最後に甲斐駒方面から三重県(四日市と松阪市)の男性2名がやってきて最後だった。この三重の男性陣の一人が話し好きで、遅くまで私と盛り上がってしまった。夜中に外に出たら駒ヶ根と伊那市街地の夜景が見えていた。そうそう、仙丈小屋の光も。
朝の避難小屋。人物は四日市の話好きの男性 | 朝日が当たる仙丈ケ岳 |
避難小屋から見た鋸岳。結構近く見える |
翌朝、4時過ぎに私が一番で起床し、飯を食って5時過ぎに出発。その頃には残りの3人も飯の準備や飯食い中だった。小屋の外はライト不要な明るさになっており、若干雲は出ているが稜線はすっきりと晴れて白峰三山、中央アルプス、木曾御岳もすっきり見えていた。小屋の前からも第二高点、第一高点は見えており、意外近い。さて、無事に第一高点に到着できるだろうか。
砂地西端にテントが張ってあった | こちらの稜線にも朝日が当たる |
中央アルプスと木曾御嶽(クリックで拡大) | |
陽の当たる領域へ出た | ルートを間違え、北斜面を登る |
三ツ頭山頂 | 三ツ頭から見た熊穴沢ノ頭と鋸岳 |
三ツ頭から見た鋸岳 | |
三ツ頭から見た甲斐駒 | |
三ツ頭から見た北岳、間ノ岳 | |
三ツ頭から見た塩見岳 | |
三ツ頭から見た中央アルプス(クリックで拡大) | |
甲府盆地は雲海 | 熊穴沢ノ頭 |
八ヶ岳 | いよいよ第二高点が近づく |
小屋を出て白砂の稜線に出るとテントが登場、こちらも朝食中だったようだ。先に露払いしてますと声をかけておく。本当に露払いかもしれないけど・・・。でも稜線上は少し風があって稜線を巻くところを除いて草は濡れていなかった。最初からロングスパッツで防御しているので大丈夫だが。適当に歩いていたら稜線を大きく北側に巻いて草付きを横断し、その先で道が消失してしまった。どうもルートを外してしまったようで、周囲に道が無いか探したが見当たらない。こんな場合は戻るのが鉄則だが、ここは籔はないので草付きの斜面を稜線目指す。間違いなく登山道は稜線上か稜線近くにあるはずだからだ。案の定、稜線上で登山道に飛び出した。三ツ頭で展望を堪能し、熊穴沢ノ頭を越えて中ノ川乗越の鞍部へ。府中の老人はここから下山予定だ。こちらはここからが本番である。その前に雉撃ちで軽量化。
中ノ川乗越 | 中ノ川乗越から見た第二高点へのルート |
岩壁基部の石屑上を歩く | 中ノ川乗越を振り返る |
さあ、ここからが道の領域だ、とはいえ、情報によれば鹿の窓ルンゼまでは安全らしいのでまだ核心部ではない。中ノ川乗越から登りにかかると登山道は二重稜線の真ん中の落石が積もった谷間を登っていく。結構な傾斜だが危険を感じるレベルではなく、効率よく高度を稼げる。ただし、ここも熊穴沢同様に角が立った石が敷き詰められており、コケれば擦り傷は当たり前だろうから足元に注意してスピードを落として慎重に進んだ。もうこれ以上痛いのはイヤだ。
草付き樹林帯は歩きやすい | 再び落石に覆われた斜面を歩く |
石が浮いて歩きにくい | 傾斜がきつい |
北側に切り立った崖が続き、その基部を登っていくとダケカンバの樹林帯に突入、ここは石が消えて歩きやすいが再び落石原野の登りとなり、ここは石が細かくなって登りでは足元がズルズル崩れながらなので疲れる。逆に下りは効率がいいだろう。
最後の落石帯 | まもなく稜線 |
稜線に出る | 第二高点直下 |
第二高点直下のテント場 | 第二高点 |
再び樹林帯に入るといっそう傾斜がきつくなり、その上部で左に折れるとハイマツの切り開かれた登山道に変わって稜線に乗る。間もなく森林限界を突破、ハイマツが低くなって展望が開け、岩稜帯を登りきると第二高点山頂だった。とりあえず、ここまでは情報どおりで危険箇所はなかった。
第二高点から見た第一高点 | 第一高点拡大。山頂に人がいれば視認可能な距離 |
第二高点から見た甲斐駒 | |
第二高点から見た360度展望写真(クリックで拡大) | |
第二高点から見た北アルプス(クリックで拡大) | |
第二高点から見た長野南部 | |
第二高点から見た中央アルプス(クリックで拡大) | |
第二高点から見た経ヶ岳と乗鞍岳 | |
第二高点から見た奥秩父(クリックで拡大) | |
第二高点から見た八ヶ岳方面 |
岩場のピークなので展望は360度邪魔するものはない。北アは槍穂から常念、大天井岳までは目視で見えているがそれ以北は雲の中。帰ってから写真判定した結果、針ノ木岳くらいまではどうにか見えていた。中央アルプスは雲海の上に飛び出し、右奥には木曾御岳。もっと右に乗鞍岳。南アは白根三山と塩見岳がブロックするので南部は荒川岳がかろうじて山頂部だけ見えるのみであった。西に目を向けると第一高点の山頂標識がはっきりと見えており、大声を出せば届く距離だろう。ここからだと大ギャップも小ギャップも見ることはできず、稜線が続いているように見えて短時間で行けそうに思えるのだが実際は時間がかかるし危険を伴うはずだ。
ギャップ付近は谷間で日当たりが悪そうで、ここまで歩いた感触では日影は朝露で濡れたままの箇所もあり、少しでも乾いた方がいいだろうとのんびり休憩。ここで展望を堪能できたのだから第一高点で多少ガスが上がってきても構わない。標高は10mしか違わないので眺める風景も同じようなものだろう。休憩中に麦藁帽子を紛失したことが発覚、間違いなく中ノ川乗越まではザックにあったので、そこから第二高点間で落としたのは間違いない。ただ、ガレの上だと引っかかる要素はなく、樹林か稜線のハイマツ帯と思われたのでハイマツ帯を下ってみたが見当たらず。もしかしたら中ノ川乗越かなぁ。まあいいや。安価なヤツなのでまた買えばいい。ただ、今日の河原歩きは暑いだろうなぁ。
第二高点から南に下る | 岩が終わると樹林の尾根に入る |
尾根北側の樹林帯を下る | 谷底までは安全コースが続く |
標識あり | |
大ギャップに続くルンゼ手前から見た鹿の窓ルンゼ方向 |
さて、いよいよ核心部だ。工事用ヘルメットのあご紐を締めて気持ちも締めて出発。大ギャップを迂回する谷底までは安全らしいが現場に行ってみないと状況は分からない。第二高点より先は稜線上を行かずに目印と登山道は南に下る尾根に向かっていた。尾根に乗ると岩が消えてダケカンバの樹林帯に突入、尾根北側にずれて樹林帯をどんどん下っていく。もったいないがこれが危険箇所を迂回するためのルートなのだろう。途中、第一高点の案内標識があった。どこまで下ろされるのかと心配になる頃に樹林が切れて、大ギャップから落ちてくるガラガラの狭い谷を横断する。ここが標高の最低地点で高度計を見ると約2550mであった。ここでは北側の岩壁から細い水が出ていたが常時出ているかは不明だ。今は補給する必要はないので素通りする。
岩壁基部をトラバース、テラスを進む | 細いながら水が出ていた |
バンドへと上がっていく | バンド。意外に傾斜が緩く危険ではない |
バンドから大ギャップ方向を振り返る | 大ギャップ |
ここからは北側に広がる岩壁基部を西に巻いていくルートを辿る。明瞭な踏跡なので迷う恐れは無く、テラス状のルートを斜め上に上がっていく。水の無い小さな谷(鹿の窓ルンゼの続き)を越えると10mほどの岩場のバンド状の箇所を横断するが、ここは垂直な岩場のバンドではなく少し寝ているので危険は感じなかった。バンドを通過するとダケカンバの樹林帯に変貌して一時的に岩とはおさらばだ。
バンドを通過すると安全地帯 | 樹林帯を登る |
いったん鹿の窓ルンゼに出る | 登山道は再び左の草付きに逃げる |
ジグザグってルンゼ方向に向かう | ルンゼ手前 |
このまま樹林帯を詰めるのかと思いきや、少しだけ鹿の窓ルンゼの谷筋を登る。今度はこのまま岩のルンゼを詰めるのかと思ったら踏跡は左手の草付きに逃げる。尾根に突き当たると上部は岩壁で登れないので踏跡は鋭角に戻るように斜面をトラバースし、再びルンゼに出ると鹿の窓からぶら下がる鎖の末端だった。ここからはルンゼを登れということか。
ルンゼに出ると鎖の末端 | 下部の1/2くらいは鎖を使わなくとも容易に登れる |
ルンゼは垂直に近いのかと思ったら意外に傾斜が緩く、かなりの区間は鎖を使うことなく登ることができた。中央付近のみ安全確保のために鎖に頼ったが手馴れた人なら岩のホールドとスタンスだけで登れそうな状況だった。岩も思ったよりも脆くはなく、手や足を置いた箇所が崩れることはなかった。ただし、岩場には多数の小石が乗っており、これらに触れればたちまち落ちていく。かなり神経を使わないと落石をゼロにするのは難しく、ルンゼ内に誰かいる間は安全な場所で待機するのが正解だろう。自然に落石が発生するような気配はなく、自分が落とすことはあっても上から落ちてくることはなかった。
この手前は安全確保の意味で鎖を使った | 上部からルンゼを見下ろす(安全地帯で撮影) |
鹿の窓(甲州側から信州側を見ている) | 鹿の窓から見た第一高点 |
中間付近を過ぎれば再び鎖を頼らず登れるようになり、鹿の窓の穴を通過して山梨側に出た。まずは難所の一つを突破したが、ここはそれほどヤバいところではなかったな。
小ギャップの鎖支点へと岩稜東をトラバース | 鹿の窓鞍部を振り返る |
小ギャップを見下ろす。垂直ではなかった |
鹿の窓の穴があるのは小鞍部で、そこから左の樹林帯をトラバースし、岩稜を東から巻いて太い鎖の支点がある岩の稜線に上がると、その先が次なる関門の小ギャップだった。高さはこちら側が20m程度、反対側は10m位だろうか、パっと見た感じでは「向こう岸」の鎖の方が高さは低いものの途中がほぼ垂直っぽい。少々腕力が必要かな。
鎖ではなくその右の草付きを下る | 念のため2ピッチに区切ってお助けロープで安全確保 |
小ギャップの谷底 | 小ギャップ対岸から見た鎖とルート |
さて、小ギャップの谷底への下りだが、鎖がぶら下がっている場所は傾斜がかなりきついし岩の凸凹も少なく、ちょっとばかり下るのには危険を伴いそうだ。そこを下るよりも鎖の右側の草付き斜面の方が傾斜が緩く、しかも明瞭な踏跡がジグザグに付いていて結構な人数が鎖を使わずこちらを通過しているように見えた。危険度は草付き斜面の方が格段に低く、迷うことなく草付き斜面を下り始めた。傾斜は鎖場より緩いとはいえ、それなりの斜度があるため万が一足を滑らせるとそのまま滑落の危険性はあるため、ヤバそうな箇所は手持ちのお助けロープを取り出して立木を利用してロープを垂らし、滑ってもロープにしがみつける状態にして下っていった。幸い、ロープに頼る場面は登場しなかったが2箇所ほど滑落防護に利用した。登りならロープのバックアップ無しにそのまま斜面を登ることが可能だろう。
第一高点側の鎖。途中はほぼ垂直 | 途中で写真撮影の余裕なし。安全地帯からギャップ底を見下ろす |
ギャップの谷底に到着してロープを回収、最後にして最大の難関の鎖場に挑戦だ。最下部は鎖の助けなく登ることが可能だが、途中から傾斜がほぼ垂直になり、鎖が垂れ下がったルート上だとホールド、スタンスの間隔が広がって少し無理な体勢で登ることになる。鎖を使わず左手を登った方がホールド、スタンスの数が多く登りやすそうだが、ここで万が一ミスったら4,5m墜落してしまうため、岩に慣れていて自分のクライミング技術の限界を把握しており、自分の技術なら絶対落ちることはないと判断できる人以外は鎖に頼るべきだろう。足の置き場の都合上、結構無理な体勢で垂直によじ登るため腕にも力が入るが、これが下りだと腕力でぶら下がる場面が出てきそうだ。ここを下りで使う場合、ロープとハーネスを持参して懸垂下降した方が安心できるだろう。なお、鎖のルート上には浮石や脆い箇所はなく落石が落ちてくることも落石を自分で発生させることもなかった。先人の通過で落ちるべきものは全て落ちているということだろう。
2,3ステップが緊張する場面だが、それを過ぎれば鎖を使わなくても登れる状態になり、すぐに鎖場が終了した。鎖の距離は短いが西穂の独標〜ロバノ耳間の各鎖場よりも難易度は確実に上だった。たぶん今まで通過した鎖場の中で一番高度感があり、落ちた時のリスクを意識した場所だと思う。技術的に難しいというよりは高度感があるので「もしミスったら・・・」という恐怖感が大きいかったかな。ここはエアリアマップでは赤点線だが、茶色点線くらいが適当に思えた。クライミングの技術は不要であるが岩に不慣れな人が上り下るするのは困難だ。パーティーで縦走する場合、手慣れた人がまず登って支点を確保し、トップロープで後続を登らせるのが正解だろう。
既に安全地帯。右に進む | 小ギャップ上から見た第一高点(奥のピーク) |
第二高点を振り返る | 第一高点。背景は甲斐駒 |
第一高点から見た甲斐駒〜仙丈ケ岳(クリックで拡大) | |
第一高点から見た西半分の展望(クリックで拡大) | |
第一高点から見た槍穂 | |
第一高点から見た坊主山と烏帽子岳 |
小ギャップを登ってしまえばもう安全圏で、以降は特に危険のない稜線を歩くだけだった。段々と高度を上げて久しぶりの第一高点到着。たぶん以前は無かった山頂標識がお出迎えだ。ここも360度遮る物はなく大展望だ。北ア方面は徐々に雲の高さが高くなり、見えるのは槍や奥穂のてっぺん付近のみとなっていた。上空は晴れているのだが。まあ、さっき第一高点で堪能したからいいけど。もう危険地帯は無いし、早く下山しても下界は暑いだろうし、ここでのんびりすることに。第二高点に人の姿が見えないかちょくちょく見ていたのだが、休憩している姿は見えないうちに小ギャップを越えてきた人の姿が目に入った。単独なので間違いなく避難小屋近くの砂礫地で幕営していた人だろう。休憩時間が1時間近いが、プラス10分くらい伸びても問題ないので山頂到着まで待つことに。山頂に上がってきた人物はテントの人で、私より4,50分遅れで出発したそうだ。避難小屋で一緒だった2人はその後の出発らしい。少し話をしている間に第二高点に人間の姿が。2人いたので避難小屋で一緒だった三重の男性陣に間違いない。ここに到着するまでどれくらいかかるか分からないが、さすがにそこまで待っているのは時間が長すぎるのでこれにて退散することにした。男性はしばしここで休憩らしい。甲斐駒から縦走してきたので、たぶん車は仙流荘か戸台大橋だと思うが、下山時間があえば乗せていけるだろう。
角兵衛沢のコルへ下る | 第一高点を振り返る |
角兵衛沢を見下ろす | 角兵衛沢のコルから見た角兵衛沢ノ頭方面 |
第一高点以降は危険箇所もなく、稜線上を淡々と下っていく。傾斜はそれなりにあるが崖を降りるわけではないので問題なし。
稜線を離れ角兵衛沢に下る道 | 角兵衛沢のコル付近のテント場 |
落石に覆われた角兵衛沢を下る | 道は左の樹林帯に移る。目印あり |
でもまだ落石原野が多い | 樹林は地面が硬くて歩きやすい |
巨大岩壁基部を下る | 巨大岩壁を見上げる |
すぐに角兵衛沢鞍部に到着、左に曲がって熊穴沢と同じように落石で覆い尽くされた広くて急な谷間を下っていく。所々に目印があって迷うことはなく、少し下って立木が現れ始めると左手に目印が移り、少しの間はガレから開放されて樹林帯の中を行けるが、そのうちにまたガレの上を歩くようになる。全体的には概ねガレの東端(下りでは左端)にルートがある。小石がジャリジャリに緩く重なった場所は下りではいいが登りだと疲れるだろうな。熊穴沢同様、目印は途切れることなく続いていて初めて歩いても迷う心配は無かった。
巨大岩壁から下部は樹林帯に突入 | 踏跡、目印が続く |
旧長谷村の標識(今は伊那市) | 樹林の中に巨岩群 |
小さな沢を横断 | ガレた沢を横断 |
なだらかな樹林で戸台川近し | 角兵衛沢出合 |
巨大な岩壁基部を通過すると足の疲れるガレから開放されて、しっかりした地面のシラビソ樹林帯を下るようになる。歩きやすいのはいいのだが日が高くなって標高も落ち、徐々に気温が上がってくるのが体感でき、樹林で日影になっているにもかかわらず汗が噴出すようになり、濡れタオルで頻繁に汗を拭う。こんな時刻に登ったら汗だくだな。傾斜がきつく下りでも汗をかくのだから登りだともっとだろう。どんどん下り、沢を2つ越えるとやっと戸台川が接近、傾斜がぐっと緩んで樹林が開けると角兵衛沢出合に到着した。
いい飛び石があって靴を脱がずに渡れた | 角兵衛沢を振り返る |
休憩する前に渡渉を済ませてしまおうと、靴を脱がずに渡れそうな場所を探す。ここも水量と飛び石の関係が微妙ですぐには最適地を見出せなかったが、50mくらい上流側にいい位置関係の飛び石を発見。ここなら飛ぶ必要もなく跨いで渡れそうだ。念のためロングスパッツを装着して水没に備えたが出番もなく、簡単に対岸に渡ることができた。ようやくほっと一息入れて、汗を含んだ濡れタオルを川の水で洗い流し、全身をそのタオルで拭ってさっぱりした。日影で座っていれば汗をかかないで済むが、これから河原を歩くとまた汗をかかされるな。休憩中、上流側にも下流側にも人の姿は無かった。
角兵衛沢出合から見た嫦娥岳 | 戸台川左岸を下る |
左岸樹林の踏跡 | 渡渉して堰堤右岸に移動 |
堰堤を越えると林道終点 | 発電用取水堰 |
キノコ採りのジモティー2人。長靴と地下足袋で水に対応済み | 飛び石を利用して2度渡渉 |
あとは駐車場まで延々と河原を歩くのみ。2連堰堤手前の渡渉は往路と同様に問題なし、次の渡渉の前で茸取りのジモティーに遭遇。あちらは長靴と地下足袋で水に入っても問題無しの格好だったので、ずっと右岸側を歩いていった。こちらは渡りやすい所を見つけて一度左岸に渡り、右岸から流れが離れた後を見計らって渡りやすい所で右岸に戻った。往路では強引に渡ったのだが帰りは飛び石のいい場所を見つけて苦労することはなかった。
最初の堰堤で林道に這い上がる | 林道を歩く。単調だが河原歩きよりずっと楽 |
ゴール目前 | 駐車場到着 |
最後の堰堤を越えてカンカン照りの中を我慢して歩きゴールイン。府中の岩登りの老人の車はまだ置いてあり、どうも私の方が先に下山できたようだ。昨日のもう1台の車とバイクは消えており、代わりに3台増えていた。そのうち1台はキノコ採りの人、残り2台は作業服を着て河原から戻ってきた3人衆であった。すぐに帰ってもいいのだが第一高点で別れた男性が適当な時間に戻ってきたら車に乗せてやろうと考え、川で汗を拭ってから車のドアを全開でしばし昼寝。やがて府中の老人が到着。しばらく話をしてから温泉目指して先に出発していった。それから30分くらい待ったが他に人の姿は無く、こちらも温泉に向かった。